そもそもCyber Resilience Act(CRA)って何?
💡 ポイント: GDPRが“個人情報の罰則”なら、CRAは“プロダクトの罰則”。モノづくり企業にとっては“売る資格”そのものが懸かる。
発効から“100日”で現場はどう動いた?(速報トレンド)
動き | 影響 | 実例 |
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SBOMツールの爆売れ | サプライチェーン可視化が必須要件。エンタープライズ版SBOM管理SaaSが月内に3社上場を発表 | SBOMaaS各社のEU顧客比率が50%→83%へ急伸(Endor Labs調べ)endorlabs.com |
“CRA対策室”の新設ラッシュ | 大手製造業が法務+セキュリティ+品質保証で横断組織を新設 | BOSCHが100人体制の「Digital Product Security Office」を発表(3月25日) |
OSSコミュニティの反発継続 | 無償開発者まで罰則対象になる懸念 | Apache Fdn.やOSIが再度の“免除条項”要望書を提出(4月10日)en.wikipedia.org |
初心者も押さえるべき“義務と締め切り”早見表
期日 | 企業がやること | 製品クラス | 補足 |
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2025年末 | ①SBOM作成プロセス確立 ②脆弱性報告窓口公開 | 全製品 | “準備段階”として監督当局が推奨 |
2026年末 | ①セキュア開発ライフサイクル文書化 ②侵害対応手順・年2回演習 | “重要”・“重要+”製品 | Annex III の「クラスⅠ/Ⅱ」想定 |
2027/12/11 | ①CEマーク更新 ②5年間のパッチ提供契約開始 | EU市場に初めて投入する全製品 | 未適合品は在庫でも販売不可consilium.europa.eu |
利用者(企業内IT・個人ユーザー)視点:今日から出来る3つの備え
- “CRA対応”ラベルをチェック
- CEマークだけでなく、SBOM添付の有無を調達基準に追加。
- 長期サポート契約を精査
- 5年パッチ義務を逆手に、製品ライフサイクル総コストを再計算。
- 脆弱性対応サービスの社内体制可視化
- ベンダー側の対応遅延に備え、事故時の代替ベンダーリストを持つ。
サービス提供者(システムエンジニア/メーカー)視点:技術&運用To-Do
分類 | 対策 | 具体Tips | 期待効果 |
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設計 | セキュアSDLC導入 | Threat Modeling→DAST→SAST→PenTestをCI/CDに統合 | “開発速度×準拠”両立 |
開発 | SBOM自動生成 | CycloneDX or SPDX をビルド後に出力し署名 | 証跡を残し審査短縮 |
リリース | パッチ配信チャネル確立 | CDN+電子署名+差分配布 | 5年間の更新保証コストを最適化 |
運用 | 24h脆弱性報告窓口 | ENISAの“Coordinated Vulnerability Disclosure”ガイド準拠 | 罰則リスク低減 |
ドキュメント | CE適合宣言(DofC)更新を自動化 | GitOpsでバージョン管理 | 監査対応を“クリック1回”に |
教育方針:組織カルチャーを“CRAネイティブ”へ
受講層 | 研修テーマ | KPI例 |
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経営層 | CRA罰金シミュレーション+市場撤退リスク | 2025年度予算に“CRA準拠費”確保 |
開発者 | “4時間で作るSBOM”ハンズオン | 月1回SBOM欠落ゼロ |
CSIRT/SOC | 48時間以内のエンバグ公開演習 | ①初動時間 ②顧客周知到達率 |
法務 | “欧州語で読むCRA条文”輪読会 | 監査指摘ゼロ |
日本企業に押し寄せる“5つの実務インパクト”
# | 影響ポイント | 詳細 | 今すぐ取るべきアクション |
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1 | 輸出製品は“EU入国審査”必須 | 電機・自動車・産業ロボットなど EU 向け出荷がある企業は CE マーク更新+CRA 適合宣言(DoC) を 2027 年 12 月 11 日までに取得しないと販売停止。Tier1・Tier2 サプライヤにも SBOM 提示を求める調達条項がすでに出始めている。pillsburylaw.com | 22 Q4 版 CE ドキュメントをひな形から再作成/主要顧客の CRA 調達ポリシーを確認 |
2 | 認証コストとノウハウ不足 | 審査は EU の“Notified Body”経由だが、日本法人を持つ TÜV Rheinland や SGS が相次ぎ CRA 対応コンサル/試験サービス を開始。見積もりは量産 IoT 機器で 1 製品 300 万〜1,000 万円 が目安と報道。tuv.com | 23 年度内に予算枠を確保/技術部門と法務部門で共同 RFP 作成 |
3 | 国内法制との“二重規制”化 | 日本も 2025 年通常国会で アクティブ・サイバー防御法案 を審議中。IoT ラベリング制度「JC-STAR」と合わせ、“輸出も国内販売もセキュア開発が前提”という流れに。practiceguides.chambers.comeu-japan.eu | JC-STAR と CRA の要件マッピングを作成/国内向け製品も同水準で設計 |
4 | OSS プロジェクトへの法的リスク | 日本人メンテナーが関わる OSS が EU 商用製品に組み込まれると、脆弱性対応の遅延 が賠償に発展する恐れ。OpenSSF が無償トレーニングとテンプレ契約書を提供開始。openssf.org | OpenSSF CRA 対応ガイドで脆弱性開示手順を整備/商用ユーザと SLA を明確化 |
5 | “EU基準”がグローバルデフォルト化 | EU-Japan デジタルパートナーシップ協議で、EU 標準をアジア市場にも展開する方針を確認。今後は北米・ASEAN 調達でも同等基準が要求される可能性大。digital-strategy.ec.europa.eu | 調達・販売契約のサイバー条項を国際共通テンプレート化 |
🏃♂️ 日本企業向けクイック・ロードマップ
- Q3 2025 まで:ギャップ分析
- CRA Annex I の 21 要件 × 自社製品の満たし度をレーダーチャート化
- Q1 2026:SBOM&セキュア SDLC パイロット
- CycloneDX ベースで 3 製品の SBOM 自動生成→署名付き保管
- 2026 年度内:第三者試験所選定&試験開始
- 国内 Notified Body の仮予約を確保し、試験計画を前倒し
- 2027 H1:DoC 発行&販売体制チェック
- EU 倉庫/Amazon EU など EC プラットフォーム側の証跡要求に対応
- 2027 Q3:マーケティング転用
- “CRA Ready” ラベルを前面に出し、北米・APAC にも優位性を訴求
💡 Tip: 早期対応は「コスト」より「商機」。遅れれば取引停止だが、先行すれば EU 以外の顧客も安心材料として選んでくれる。
もし“まだ何もしていない”なら?
- 2025年Q1までにSBOM整備が現実的な分水嶺。
- OSS中心プロダクトは、コミュニティ免除条項の行方をウォッチしつつ、「商用サポート契約」で法的責任を明確化すべし。
- 日本市場のみでもEUパーツを組み込むと“輸出時点”で適用対象――グローバル取引を視野に計画を立てよう。
おわりに――100日経って見えた“静かな地殻変動”
GDPRの時と違い、CRAは**“売れない”という直接制裁で企業の腰を上げさせます。100日で既に“対策室”と“SBOM投資”が動き始めた今、「まだ3年ある」は“もう3年しかない”に変わりつつあります。あなたの組織は、2027年12月11日に堂々とEU市場へ製品を持ち込める**準備ができていますか?
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